環境に優しい土地管理の5つのステップ

持続可能性という概念はこれまで以上に広く普及しており、先進的な環境活動は無視できないものとなっている。その結果、多くの施設管理役員は、組織の社会的責任を示す全体的なコミットメントの一環として、景観については持続可能な景観にするという方向へ舵をきっている。また、多くの人々は、持続可能性という目的を超えて、持続可能な景観が草や樹木、低木や花などの植物の長期的な健康を促進することを見出している。持続可能な景観とは、長期的な景観への投資において費用を節約し、また、メンテナンスが少なくて済み、縁石の魅力を向上させるものである。それは、芝生が実際には「環境に優しい」の対極にあることを教えてくれるものである。

 

 


野生生物や有益な昆虫を引きつける植物材料をレイヤリングすることによって、商業用地も多様化することができる。 (写真:Timberline Landscaping Inc.,コロラドスプリングス,コロラド州)

 

 

持続可能な景観は、水やエネルギー、栄養素などの資源投入量を最小限に抑えながら、地域の気候と釣り合っている景観のことであり、今や商業用地の成功を保証するために必須のものとして認識されている。では、この持続可能な空間を創るためにはどのようにしたらいいのか。そのための第一歩をどのようにとらなければならないか。それについては、「環境に優しい」方向へ向かう際に留意すべき5つの最良実践がある。

 

1. 大きな影響を与える小さな変化を特定する。持続可能な景観を創造することを無理だと思うのならば、既存の植物や樹木の大幅な見直しを必要としない低コストで周りへ及ぼす影響が高いプロジェクトも数多くあることを覚えておくべきである。

 

たとえば施設管理者は、景観の専門家と協力して水の使用を管理することで、景観の環境への影響を大幅に軽減することができる。専門家は、その物件の既存の潅水システムを利用して作業を開始する。また、定期的な潅水システム検査の実施、効率的な潅水ヘッドの使用、地元の気象条件に基づいて潅水システムの実行時間を自動的に調整するスマートコントローラーへの移行をするとよい。漏水を検出することができる灌水システムフローセンサーを追加して水の使用状況を追跡し、無駄や負担、コストなどを削減することもできる。

 


景観を創り出す際は考えすぎないことだ。地域の気候に容易に適応できる在来種の草や干ばつ耐性のある植物を取り入れると良い。(Photo:Southern Botanical Inc.,ダラス,テキサス州)

 

灌水のスマートな技術によって可能になった水の保全実践の他にも、自然降雨の量についても戦略的設計によって活用することができる。景観の専門家は、水の流出を抑え、それを土壌に再浸透させるための有効な代替手段と考えられる生物湿地と雨の庭TM(植生で満たされた浅いトレンチ)の設計と実施を手助けすることができる。

 

生物湿地にも雨の庭TMにも、既存の在来種を植えることができる。それらは施設管理者や周囲の環境に利益をもたらし、メンテナンスをほとんど必要としない。

 

 

2. 既存の植物や樹木を育てる。既存の植物をすべて取り除いて清潔なスレートで持続可能性の取り組みを開始することが最善であると信じている人々もいるが、ほとんどのランドスケープの専門家は景観の自然なプロセスを混乱させないよう助言するだろう。既存の植物が定期的なメンテナンスと剪定をしても現在の環境でうまくいかない場合、専門家は、これらの植物を完全に取り除く前に、新しい場所に移植して育つかどうかを確認することを勧めている。

 

大きなよく根付いている樹木は、施設の正規の入居者やゲストの安全性だけでなく、自身の長期的な健康を確保するためにも、各シーズンに適切に維持管理や剪定をされなければならない。結局のところ樹木というのは、商業用不動産に多大な美的価値を付加するだけでなく、酸素を供給して二酸化炭素を固定することによって持続可能性を促進するものである。

 

 

3. 目的を以って植物を植える。樹木、低木、花、または草であろうと、すべての植物は酸素を放出するため環境にとって有益だが、商業用地で持続可能な景観を創ろうと作業するのならば、植物を賢明に選ぶことが重要となる。

 


植物を植える場所がない?問題ない。グリーンルーフは、酸素の生産や建物の冷却・断熱など多くの持続可能な利益をもたらす。(写真:Town and Gardens Ltd.,ロングアイランド,ニューヨーク州)

 

水を節約し、景観のカーボンフットプリントを削減するのに最良の方法は、在来種や干ばつ耐性のある植物を選ぶことである。景観の専門家ならばこれを助けることができる。在来種や干ばつ耐性のある植物のほとんどが、その地域の特定の気候に容易に適応し、活着したのちは自然降雨以外の潅水をほとんど必要としない。植物素材を層ごとに分けそれを重ねるように植えることによって(レイヤリング)景観に多様性をゆっくりと導入することができる。それは、野生生物や有益な昆虫を引きつけ、炭素固定を最適化し、より複雑で健康的な生態系全体を促進する、スマートで持続可能な戦略である。

 

 

4. 景観から出る「ゴミ」をリサイクルする機会を探す。大面積な商業用不動産は景観ゴミを多く生み出すことがあるが、こうした芝生の刈草や落葉、倒れた枝などを、実際に捨てる代わりに再利用するのは良いことである。

 

景観ゴミを再利用する方法の一つに、刈草や葉などの植物材料を有機土壌に変換する微生物プロセスの堆肥化というのがある。堆肥はこうしたゴミが出るのを減らすだけでなく、植物が繁栄するのに役立つ重要な栄養素を地面に還元してくれる。

 

堆肥化のもう一つのやり方は、 “クリッピングサイクリング”である。これは、芝生の刈った後にでる刈草(クリッピング)が自然肥料として働くために、刈り取られた後にも芝生の上に残す方法である。他にも、景観ゴミを再利用する環境にやさしい方法として、敷地から出る落葉、刈草や枝を花壇などに敷くマルチングの材料へ変えることがある。新鮮なマルチは魅力的なだけでなく、樹木や低木の根を守り、寒い時期の保護を提供し、植物が水を必要としないように土壌に必要な水分を多く保持してくれる。

施設管理者は、持続可能性プログラムを実施する際には、以上のような選択肢や他のリサイクル方法について、敷地の景観請負業者と話し合うべきである。

 

 

5. 景観のことを制限のあるものと捉えない。商業用不動産の屋外のスペースが限られている場合や、それが都市の環境にある場合は、景観の持続可能性を高めるために野外にプランターボックスを置くことを考えてみる。建物の屋根や壁に内張するように取り付けられるグリーンウオールやグリーンルーフは、酸素の生成や冷却効果、さらには断熱効果によるエネルギーの節約や雨水の流出量の減少、住民が楽しめる緑地の減少から受けるストレスの軽減、といった効果がある。専門家は持続可能なグリーンルーフや垂直ウォールガーデンの設計と実施を担当することで施設管理者やエグゼクティブを支援することができる。 この選択肢は、数センチの植物による被覆を加えるだけで、植物や樹木のあるレクリエーション空間を持つ完全に公園のような環境を整えることを可能にするのだ。

 

敷地の環境にやさしい機能を強化する機会について考えているときは、持続可能な景観に投資することで得られるすべての選択肢と利点を念頭に置いて欲しい。 これらは環境にとって良いことであるだけでなく、持続可能な景観はしばしばメンテナンスを必要とせず、テナントや他のタイプの借家に対するセールスポイントとしても役立つ。 さあ、緑化をする準備はできただろうか?景観の専門家は、商業用不動産の環境を保護し改善するような環境にやさしい景観を設計して導入するのを助けることができる。