バイオスウェイル(生物低湿地)

公開日 2009年1月6日 最終更新日 2016年5月2日

敷地内に降った雨の流出を抑制する方法のひとつにバイオスウェイルがある。

 

スウェイル(低湿地)とは

 

スウェイル(低湿地)とは英語のSwaleのことで、低湿地あるいは湿地、窪地と訳すのが一般的である。ランドスケープ計画を行う際、この領域と一般的な植栽地・植栽マスとは、どこがどう異なるのかというと、植栽地は単に植栽をするために土壌を整備した場所であるのに対し、低湿地は植物よりも水の流れの行き着く先として設置されるものであるということだろう。水の流れとは、硬質舗装面の上を流れる雨水の流れのことである。この流出水を導いて浸透させる目的で設置する、他よりも低く造られた植栽地のことを低湿地という。「湿地」なのでむろん、植栽は行う。そこをより自然を模したつくりとするために、自生種やグラス類が多く使われてる。

 

バイオスウェイル(生物湿地)とは

 

この低湿地に流入した水をろ過浸透させる機能をもたせることによって、さらにBiswale(バイオスウェル:生物低湿地)という機能的ランドスケープ装置として、呼ばれることがある。雨の庭や低影響開発に基づいあ計画の中で、スウェイルまたは低湿地と言えばバイオスウェイルのことを指す。

 

バイオスウェイル、つまり、地中への雨水のろ過浸透実践を行う低湿地はそれ単体では作られることはない。広場、駐車場、道路などその周囲には必ず硬質舗装面があるはずである。その舗装面からの雨水を流入させる装置なので、舗装の設計と連動して作られるものなのである。植栽はこの湿地が機能を果たすための重要な役割を演じている。その環境に合うものであり、機能性を発揮できるものでなければならない。バイオスウェイルは、どのような場所にも設置できる。

 

 

駐車場におけるバイオスウェイルの設置例

 

一般的に米国の場合、駐車場には緑化帯を設ける。完成当初は小さな苗木を植えたとしても、永の日には日陰を供給するように大きく育てるのである。米国の駐車場規模は日本よりも大きいので、建物入口へ移動するまでの間、日陰を提供するのは良いことであるし、求められる。また、樹木を植えない場合でも、低木や下草などの緑のある駐車場が一般的である。ここ数年、駐車場のアイランドと呼ばれる緑地帯を低湿地にして、駐車場舗装面を流れる雨水をそこへ導いて浸透させるという動きが盛んになってきた。

 

 

バイオスウェイルの役割

 

米国では、駐車場の舗装面を流れる水が実は油や排気ガスなどで汚染されていることが、かなり知られている。高速道路の上を流れる雨も同様である。日本では、こうした舗装面を流れる水が汚染されているとの認識は、まだ足りない。汚染された水が貯水池や河川などに流れ込めば、水源が汚染されてしまう。たとえ飲用としなくとも、環境汚染を促進するのは間違いない。米国では1980年代の後半から、こうした環境汚染の危険性を開発計画時に回避するのが必要ではないかと、意思決定者や計画者、事業者たちが認識をし始めた。

 

デザイナーや公共機関が水質汚染に対して抑制対策をとるのは、あたりまえだという風潮になってきている。そこで、バイオスウェイルの出番となる。これを駐車場の舗装面に隣接する形で設ける。下の図を参照して欲しい。舗装面の表流水は、表面の勾配によってバイオスウェイルへと導かれる。

 

駐車場に設置したバイオスウェイル(生物湿地)の平面図

 

 

駐車場に設置したバイオスウェイルの断面図

 

 

 

バイオスウェイルは、雨の庭など低影響開発計画の一部である。特別難しい構造ではなく、従来の植栽地に少し手を加える程度で造ることが可能である。