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低影響開発とはLow Impact Developmentと綴り、その頭文字をとってLID(リッド)と略される。それは、雨水を降った場所のできるだけ近くで管理しようとする革新的な降雨管理の方法である。つまり、雨水を一極集中的な処理場へ運んで処理するのではなく、小規模な敷地単位で管理するものである。

 

低影響開発がめざすのは、その敷地が開発される前にあった水文機能を、開発後の敷地の水文システムでも再現することである。このために、浸透やろ過、貯留、蒸散などの技術を使って敷地には「装置」や「設備」「セル(細胞という意味だが小単位の設備という意味)」とよばれる施設を設置する。こうした装置の設計技術は、降雨を不要物として捉える雨水管理ではなく、資源として見直す雨水管理をしようとする立場に基づくものである。従来、舗装面や屋根に降った雨は、調整池などの排水域へ集められてその底部から伸びる配管によって離れた地にある大きな汚水処理場へと運ばれて、処理されてきた。しかし、低影響開発というのはそれとは異なり、敷地単位に小規模で費用効率の良い装置を設置し、それを通じて降雨を処理するもので、この「装置」は土壌と緑を軸に設計されるために、ランドスケープ的な機能を併せ持っている。ここで言うランドスケープ機能とは、殺風景なコンクリートの人工的風景ではなく、地域を緑化し、美観に貢献するものである。これは通常、オープンスペースやルーフトップ、ストリートスケープ、駐車場、歩道などに付属する場所となっており、集約的には「雨の庭」と呼ばれる庭の形をとることもある。この雨の庭は、その「雨水を一時期溜めてそこに浸透させて処理する」という特性から「バイオレテンション(生物滞留)」や「バイオスウェイル(生物低湿地)」などと呼ばれることもある。

 

いろいろな語句を書いたが、要するに低影響開発とは、雨水を資源として活用し、新規開発にも都市の改装にも、また、都市の再開発や再生にも等しく適用できる多目的な手法である。そして、住宅の庭から公有地、道路、商業地、工業地などすべての規模で適用できる手法である。誤解すべきでないことは、貯めるという一元的な方法ではないということである。低影響開発は何のために行うのか。それは、雨水流出管理とあらゆる水域の水質向上のために、行われるものである。しかしながら、そのために大規模な設備投資はできるだけやめよう、箱モノ投資はやめようとしている。

 

 

低影響開発のめざすもの

1. 水質浄化
2. 雨水流出の削減
3. 雨水流出の一時滞留
4. 自然の水循環システムの再構築

 

低影響開発各論:

低影響開発とは雨水管理の方法であるから、様々なやり方がある。それらは単独で実践するよりも複数を合わせて実践する方が効果が高い。必ずしも複数実践にすべきものではないので、状況に応じた実践が重要である。方法の一例を下に挙げる。

>> グリーンインフラストラクチャー
>> ストームH2o(ストームウオーター)
>> 雨の庭™

>> ゼリスケープ

>> イリゲーション(灌水)

>> 屋上緑化

 

 

低影響開発(L.I.D)と従来の雨水管理

現在広く一般的に行われている雨水管理がどのようなものであるかというと、それは、降雨を下水管や雨水管を使って輸送し、放流もしくは集中化した処理システムで処理した後に放流するという一元的な方法である。これに対してL.I.Dとは、降雨自体を水源と見なし、敷地の隅々に降り注いだ雨をそのまま利用し、敷地レベルで雨水管理をする思想である。

LIDはどのように始めたらよいのか?
LIDによる開発の原則は、1980年代半ばに、米国メリーランド州プリンスジョージ郡でバイオレテンション技術の紹介と共に始まった。LIDは、プリンスジョージ郡に、従来の降雨管理実践では日に日に大きくなる経済的あるいは環境的な限界を解決してくれるパイオニアであった。LIDは、よりよい水保全収支、生長、生態系保護、公衆衛生の質などを達成するスマートな設計と先進的な技術を使うことによって、潜在的に環境負荷のない大規模開発を可能にさせた。
今日、バイオレテンションは、ユーザーが利用できるLID技術のただひとつである。透水性舗装、樹木BOXプランター、縦樋の分断などの他の技術は、ユーザーが汚染制御、流出量の削減、流出のタイミングの管理、他、数々の生態的懸念を処理するのに役立つLIDによって設計された敷地をすべて代表するものである。

なぜLID技術を用いる必要があるのか?
LIDには、従来の降雨管理の方法と比べると、より多くの恩恵と長所がある。例えば、都市化の悪影響を解決するのにより経済的で持続可能でありより環境的に優しい手法である。全敷地設計の中で流出をその発生源にできるだけ近いところで処理することによって、LIDは地域の環境を増強し、公衆衛生を守り、地域社会居住性を向上させる、そして、全ての開発業者と地元行政の予算を節約する。これ以上の方法はない。降雨プログラムは、幅広い範囲の複合的かつ挑戦的なエコシステムと公衆衛生が保全されることを必要とする、このための多くの目標は、従来の降雨処理技術では合致するものがなく、地域社会は、日々老朽化し、拡張し続ける降雨インフラストラクチャーに苦しんでいる。流域内ですでに開発された地区で、如何に河川の水質を保ち続けるかは、中々難しい問題である。この問題の解決のために簡潔に、不浸透性の削減や従来の拘留池に頼ることは、可能ではなく、実践的でも持続可能でもない。LIDは地域の水循環や水域の変化を最小限に食い止めるか、制御するために重要な鍵を供給する。

 

 

リッドは、段階的に実施する開発条例になる可能性を秘める。降水を保全するために、緑地のある場所すべてで敷地からの降雨流出をその緑地に維持させ、浸透を最大限にすることにより流出を最小限にする。それは、水質改善にナチュラル・プロセス(自然浸透・貯留)を利用するために機能的ランドスケープを必要とする。それには次のようなものがある。

 

 

バイオレメディエーション

・バイオスウェイルBioswale (生物湿地・バイオ湿地・低湿地)

・バイオレテンションBioretention(バイオ貯留池・生物滞留池)

 

バイオレメデーション装置:生物浄化

リッドで用いるこれらの装置は、様々な野草、草花、潅木、樹木などを用いてつくることができる。その目的は、蒸発散を促進し、土壌の多孔量を保全し、生物学的活性を促進し、土壌や植物への汚染物質の取込みを促進するために設置する。つまり、多くの不浸透性の地域による流出が、バイオレメディエーション装置へと導かれ、そこで、水処理を草木、マルチ、土壤環境が行い、雨水を水循環に積極的に載せる・・・ということが実現するのである。

その特徴

そこで、この装置は、場所を限らずに、土地開発計画の全体にわたって、水源近くの表面流出を遮断するために戦略的に配置することになる。また、多くの場合、水質衛生の要素を提供するようにもともと立案されている。
さらに最近の調査では、流出の量制御を達することができることを示している。が、このバイオ処理方式は、(浸透、濾過、浄化について)同程度の効果が期待できる人工の装置や材料と異なり、ランドスケープ(造園)を美的に満足させるという恩恵(利益)を持っている。また、廃水処理の知識や文献調査によって、土壤や植物が水を利用して、汚染物質をろ過する作用があることも認められている。

 

 

低影響開発による利益

 

環境利益

  • 自然の水循環サイクルを助長する
  • 造園(庭・湿地)からの流出量と流出水位を保つ
  • 河川の水位が高くなるのを防ぎ、洪水を防止し、魚類と野生動物環境を保護する
  • 降雨流出中の汚染物質を減らす
  • 甲殻類の繁殖地域や海岸が細菌汚染しないよう保護する
  • 樹木や他の植物を保全または回復する

 

開発者の利益

  • 敷地配置計画や降水装置の設置や改造に、新しい選択を提供する
  • 降雨処理施設の建設コストを削減する
  • 魅力ある近隣地区を生み出すのに役に立ち、敷地建物がより速くプレミアム付きで売れる
  • 降水池を縮小し、その面積を他の多様性のある価値あるものを生み出すのに利用できる
  • 降水処理費用を縮小する

 

地方自治体や地域社会の利益

  • 洪水を防止する
  • 河川や、野生生物の生息地、海洋生物の生息地を保全する
  • 飲料水供給を維持する
  • 降水処理施設の維持費を縮小する
  • 道路、縁石、樋、他の基礎設備の低コスト化を行う
  • 地域社会の外観と美的価値を上げる
  • 敷地の資産価値を上げる
  • コスト効率の良い都市の装置の近代化に対して新しい手法を提供する
  • 下水処理施設の費用を削減する

 

 

資料) (c)Puget Sound Action Team, office of the govemor , State of wathingoton.