グリーンインフラストラクチャーは元々自然のシステムである

生物低湿地とは、土壌や植物を使って雨水を自然に管理するグリーンインフラシステムである。 写真はウィスコンシン州グリーンデール。©Aaron Volkening(www.flickr.com)

人間が雨水を管理するために配管や排水管、ポンプなどの「グレーインフラストラクチャー」を使用するようになる以前、自然は「グリーンインフラストラクチャー」を自ら提供して水の流れを減速させてろ過し、元々属する場所(水域)へと移動させていた。森林や湿地のような場所は、今でも水は自然に管理されている。そして、このネットワークの基礎となっているのは土壌であった。土壌とは、いわば、配管、排水管、ポンプ、水処理場の機能が一つになったものなのである。

 

 

しかし、私たちはそんな土壌を舗装し続けている。その結果、自然の雨水管理システムと人工の雨水管理システムの双方に対する要求が高まっている。都市において自然と人工両方の雨水管理システムの緊張を緩和するためのグリーンインフラストラクチャーの使用は、コストのかかるグレーインフラストラクチャーの拡張に対する代替案として広く普及している。このグリーンインフラストラクチャーの技術は、土壌の固有でユニークな性質に大きく依存するものである。

 

 

土壌はその特性によって、洪水の防止、河川や水処理施設への過負荷の防止、地下水の再補充などを実現しており、土壌は水がどれくらい迅速に、どれくらいの量で浸透するかを決定づけるものである。また、都市の雨水に含まれる汚染物質のろ過にも大きく貢献しており、逆に、そうでなければ深刻な水質問題につながる可能性がある。

 

 

さらに土壌は、浸食を防ぎ、再利用や貯蔵によって流出雨水を減らし、空気をきれいにし、あるいは冷却し、都市空間に美的品質を提供する植物を支持するのに必要な栄養素および水保持能力を提供するものである。つまり土壌は、雨水管理の主な目的である水量の削減と水質の改善の両方に責任がある。

 

 

 

グリーンインフラストラクチャ―は重要なものである。それはなぜか
 

答:グリーンインフラストラクチャーは、気温の調整や雨水流出の削減などをもたらす。

 

 

都市部には建物や舗装された道路、駐車場、コンクリートの歩道などいくつもの形態のハードスケープが広大に広がっている。しかし、こうした不浸透性の表面は降水量の多い時期に雨を浸透させることができず、そのまま表面から流出させる。

 

 

雨水が表面流出することのなにがいけないのだろうか。それは、都市部に降る雨のうち最大で55%もの量が流出の形で流れていってしまう可能性があることである。つまり、都市部に降った雨は浸透しないということだ。流れる?どこに? それは都市の下水道へである。降ったままの形であれば資源であったはずの雨も、下水道へと入ってしまえば、単なる「廃棄物」として「不要な処理すべきもの」として扱われてしまう。不要なものを処理するために費用がかかることになるが、雨水とはそもそも不要なものでしかないのだろうか?

 

 

雨水の表面流出には、都市部にある排水不良な圧縮土壌も寄与している。雨水流出がもたらす環境上の悪い影響とはなにか? それには、斜面など地表の浸食や都市汚水処理システムへの過負荷の上昇、汚染物質(化学物質、油脂、肥料)の自然界への流出などがある。この雨水に混じる一般的な汚染物質とその供給源としては、ブレーキパッドや屋根材、農薬からの銅の流出、屋根材からの鉛や亜鉛の流出、肥料からのリンと窒素の流出などがある。

 

 

リンは厄介な物質である。畑にあればそれは作物を育む重要な栄養素であるのに、水中に高濃度の肥料が含まれた場合、特にリンならば、自然界の水域に栄養分を蓄積させることで富栄養化につながることがある。富栄養化が生じた結果、微生物が食する藻類の花が一時期増えるが、やがてこれらの微生物が死ぬと水中の酸素が枯渇し、魚や他の水生生物に悪影響を及ぼすことになる。私たちが農作物や園芸植物の健やかな生長を願って施す肥料であっても地表から流出することで、それはどこかの水域に悪影響を及ぼす可能性があるのだ。

 

 

グリーンインフラストラクチャ―とは自然を模したものである
 

それでは、雨水とは厄介な代物なのだろうかと問えば、そのようなことはない。自然環境の場合、森林、野外畑、湿地などにおいて雨水の管理はより効率的に行われている。土壌は透水性があり、それゆえ有効な水の浸透を可能にして流出を減少させるものである。そもそも、最近一般に広く認識されつつあるグリーンインフラストラクチャー(GI)というものは、これを都市の環境でシミュレートする装置であり、日本ではまだまだだが、米国などの海外では従来の「グレー」インフラストラクチャーに取って代わりつつある。定義上、グリーンインフラストラクチャーとは、「雨水の集水、浄化、浸透などの環境サービスを提供するために、生きた自然のシステムを使用する人工的に構築された機能」を指しているが、それは、「野生生物の生息地を作り出し、道路や建物を遮光して冷却し、交通を落ち着かせるものである」。そして、GIのメリット(利益)を具体的に挙げると、都市部での気温の調整、街路と歩道の美観の向上、雨水の流出量の削減およびろ過などがある。利益があるのだからもっと普及すべきところなのだが、都市の環境で利用できるグリーンインフラにはいくつかの種類があり、例えばそれらは、都市林、グリーンルーフ、雨の庭、生物園などである。

 

 

 

都市の森林
 
都市の森林とも都市林とも言えるが、これはいわゆるグリーンベルト地帯のことである。木々をはじめとした植生で構成されている場所、一例として公園や街路、緑道、住宅風景などの連なりがグリーンベルトとなるが、こうした都市森林は一般に、よく見られる品種で構成されている。新しく近隣地区が開発される場合、長期的な投資として樹木を植えるのは価値あることである。雨水の流出を減らし、周囲の空気を冷やし、不動産価値を高めるといった都市林による樹冠の力は、多くの都市で実証されている。

 

 

 

グリーンルーフ
 

屋上庭園とも呼ばれるグリーンルーフ(緑の屋根)も都市のグリーンインフラである。グリーンルーフは、ヒートアイランド効果を減らすのに役立っている。都市部では、ハードスケープは太陽からの熱を反映してしまい、密集した植生地域と比べると周囲の温度を上昇させるものである。一方、グリーンルーフは、地被植物や芝草、低木(小さな写真)などの植生によって建設することができるもので、そこに、建物の住人が楽しめるような共同菜園を設けて、野菜を栽培することもできる。グリーンルーフのために選択する植物は、乾燥時期や温度変動に耐える能力を有する種類が好ましく、なおかつメンテナンス性が低いものでなければならない。このような植物を使うことによってグリーンルーフは美観を高め、屋根からの雨水の流出を調整してくれるだけでなく、蒸発散によって屋根の温度を下げることにより、ヒートアイランド効果を低減することができる。米国ではグリーンルーフの開発が推進されている。EPAの報告書によれば、晴れた日には、従来の伝統的な屋根の場合、周囲の空気よりも屋根自体が華氏で90度も高くなるが、これに対してグリーンルーフの方は周囲の空気よりも冷たくなるという。

 

 

既存の屋根の上に様々な層を設置して、グリーンルーフの建設は完了する。最上層は、重量負荷を軽減するために、嵩密度の低い土壌で生長する植物層であり、その土壌は水の浸透を可能にするために多孔質である。その下の層は、水の浸透を可能にし、最上層の土壌を保持するろ過シートである。その下にはさらに、水を貯水層や屋根保護層へと導く排水層がある。米国の場合、米国総合サービス庁(General Services Administration)によれば、グリーンルーフの最下層は既存の屋根構造を保護するための防水膜である。

 

 

雨の庭TM
 

雨の庭TMはしばしば、住宅地に小型の湿地を作るための効率的で満足のいく方法となる。EPAから引用すると、雨の庭TMとは、屋根や車道、道路などから雨水を集めて地面に浸透させることが可能なランドスケープされたくぼ地である。このような特定地域で使用する自生植物についての情報はEPAがオンラインで詳細を提供している。この雨の庭TMと概念は、雨水を集めてゆっくりと浸透させることを奨励する、州の州間高速道路に沿って設置される滞留池のように、より広い領域にも適用されている。

 

 

 

生物低湿地
 

生物低湿地(バイオスウェイル)とは「雨水下水道の代替物を提供する雨水流出輸送システム」であるとNatural Resources Conservation Serviceが報告している。概念は雨の庭TMのそれと似ているが、規模は大きく異なる。規模が両者を区別している感はある。また、それゆえ生物低湿地の方が「湿地性」の植物が用いられることが多い。生物低湿地の土壌は、1時間当たり少なくとも1/2インチの浸透速度を可能にするような多孔質な土壌でなければならず、排水が遅い場合には、流れを容易にするために、排水管を設置することになる。既存の土壌の改良には、砂、堆肥、表土、パーライト、バーミキュライトなどの改良材が追加されることがある。好ましい植生は、汚染物質のろ過を可能にし、水の浸透を可能にする植物で、その中には、大きくなるグラス類や、深く根のはる木本類が含まれる。

 

 

生物低湿地は、道路の路肩や中央分離帯、駐車場に設けられる島々に建設される。それは、平坦な地域や斜面が5%未満の地域では実用的ではないが、3:1よりも急でない勾配に変更することで、自然の輪郭から構築することができる。低湿地は10エーカー未満の排水面積に対応するように作られなければならない。業界調査によれば、生物低湿地の全表面積は雨水流出排水総面積の1%にすべきである。そして、生物低湿地を設置した後は、その効果を維持するために最良管理実践に従わなければならない。雑草や植えたわけではない植物、ゴミなどが蓄積してしまっては、美観を損ね、生物低湿地が本来もたらすはずの利益も減損してしまう。

 

 

以上で、グリーンインフラが重要な理由は理解できただろうか。それについて施工業者の観点から最後に述べるならば、グリーンインフラがランドスケープ建設の請負業者にとって重要な理由は2つ考えられる。第一の理由は、グリーンインフラストラクチャーの実践と方法を行うことで、短期的にも長期的にも環境保護活動に有益な貢献することができることである。そして第二に、創造的で代替的な生息地とソリューションを顧客に提供することは、それだけで、ビジネスの成長と繁栄を約束する競争力となることを意味する。それゆえより多くの実践者がグリーンインフラストラクチャーを採用し、それを使って創造すべきなのである。