小出兼久の常盤坐から世界を読む

Vol.130   「百万本の樹木?」


百万本の樹木?それは、我々がそれらを護りきることができるのならばということである」。

樹木は地域社会にとって大きな資産である。しかし、成木になるまで生長できるような条件で樹木を植えていないことがよくある。 写真:Edward Marritz

2012年2月米国森林局は、全国の都市で年間、約400万本の樹木が失われているという報告書を発表した。この調査は20の都市で行ったものであるが、そのうち17の都市ではキャノピーによる被覆の著しい損失が示され、16の都市では不浸透性のハードスケープ(降雨を吸収しない舗装された表面)の著しい増加が示された。それと同時に、ロサンゼルス、ニューヨーク、ソルトレークシティ、フィラデルフィアなどの都市では、市全体のグリーンインフラ整備の一環として、百万本の樹木という植栽活動を継続すると発表がされた。

 しかし、このようなイニシアティブ(発議)は、都市の樹木にとって長期的な成功をもたらすだろうか?この点について少なくとも専門家は楽観的ではない。 植樹の数を増やすだけでキャノピーによる被覆や環境効用が増えるとは期待できず、単に樹木の枯死率を増やすだけになると思われるからだ。専門家は植樹の方法こそを変更しなければならない。

 樹木は地域社会にとって大きな資産ではあるものの、成木へ生長できるような条件で樹木を植えていないことはよくあることだ。成熟した樹木がなぜ重要なのか?それは、樹木は生長するにつれて、周囲の気温の低下、エネルギーコストの削減、不動産価値の上昇、交通騒音の遮断などの効果がさらに効率的になって、経済的価値や環境的価値をより多く提供してくれるようになるからである。樹木は、成熟した大きさでやっと、有用なグリーンインフラとして機能し始めるのだ。


資料出典:DeepRoot Green Infrastructure,

 

 

 

 

米国森林局の研究者の調査によれば、幹周り30インチの樹木は、幹回り3インチの樹木が与えてくれる大気に対する利益の70倍の利益を提供する。都市の樹木は、そのほとんどすべてが開発の一部であるが、成熟した木が存在することはまれであり、そのことから鑑みるに、樹木とはパブリックスペースの価値と有用性を最大限に活用するために、最も活用されていない資産かもしれないと言われる。

都市の樹木が有用な大きさまで生長しない理由はたくさんあるが、最も重大な理由は、十分な量の土にアクセスすることができないため、短命で枯れてしまい、交換サイクルが早くなることである。樹木が環境や経済に多大な貢献ができるほど大きくなる前に、継続的な費用がかかると言って、除去されてしまうのだ。例えば、メリーランド州の天然資源省によると、繁華街にある樹木1本の平均寿命は10年未満である。そこで、これまで以上に深刻な環境上の脅威に直面している今こそ、樹木の提供する多くの利点を活用することが、計画者にとって重要になる。

 長期的に生長を維持できるような条件で木を植えることが、グリーンインフラとしての樹木試用の現状を改めるための第一の方法である。樹木が60年、70年または80年と生きるためには、1本あたり約1,000立方フィートの高品質な土壌が必要になる。推定によれば、土壌容積1,000立方フィートの土壌に植えられた樹木は、約20年後にそれまでの投資額を返済するという。そして、そうなった樹木は何十年もの間、かなりの経済価値をもたらすのである。

適切に植えられた樹木はまた、雨水インフラとしても重要な役割を果たしている。 雨水インフラはおそらく樹木が最大の価値を持つ場所である。土壌では樹木のみが栽培されているため、最大2インチという多くの場所での平均暴風事象よりも大きい雨水事象を管理できることになる。 樹木が大きくなり、完全なキャンピーが出来ると、雨水を遮断(木の葉や幹の表面に一時的に降ろされる降雨量)して管理する能力が増し、土壌による貯水以外にも大きな雨水の利点が得られる。

 私個人としては、100万本の樹木イニシアティブを選ぶつもりはない。 植林への一般市民の支持と関与は、都市林が長期にわたって成功するためには重要な部分である。が、私の主張は、木の量だけでなく、その品質と性能にも注意を払わなければならないということである。そのためには、歩道や駐車場、広場のような舗装された区域であっても、適切な土壌容積に樹木がアクセスできるような環境にすることから始める必要があるのだ。

北米の都市の中には、適切な栽培条件の問題を、街路樹に必要な土壌容積の最小値を設定することによって解決し始めている都市がある。 オンタリオ州のトロントは最も野心的なプログラムを持っている。彼らのグリーンスタンダードによれば、樹木1本につき最低15立方メートル(529立方フィート)の土地を共有し、単一の樹木1本当たり最低30立方メートル(1,059立方フィート)の土量を受け取るようになっている。ジョージア州のアテネ – クラーク郡、ウェストバージニア州環境保護局、オンタリオ州マーカム、デンバーパークス局など、樹木の長期的な生存を確保するために土壌の最小値を設定している市町村がある。

 我々は、配管や電柱のような “グレー”の都市インフラストラクチャーの機能に膨大な投資を行い、オンライン化されてすぐにその価値が失われても、効率的かつ効果的に何十年もパフォーマンスを発揮することを期待している。これに対し、樹木は逆の方法で機能するため、少し異なる計画を立てる必要があるが、樹木による投資の回収の可能性は膨大である。樹木が都市で成長し繁栄するための条件を設計することは、樹木の価値と有効性をコミュニティ全体に大きく活用することであり、我々はみな、そうした利益を得るために存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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